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2020.04.20
トランスユーロについて
トランスユーロの代表取締役会長 加藤勇樹の真実に迫る
トランスユーロ会長の加藤は新卒で特許事務所の特許翻訳者として採用され、そのまま翻訳の道を30年以上突き進んできた翻訳者です。トランスユーロ設立にあたって社長となり、昨年(2019年)からは会長を務めています。そのように聞くと、翻訳一筋で、非常に実直で、そして冗談が通じない寡黙で陰湿な人物を思い浮かべるかもしれません。
いや、逆でしょうか?
先に写真を見てしまった方は、翻訳者だとは思いもしないかもしれませんね。もしかしたら、訪問したホームページを間違えたのではないかと焦ったかもしれません。
いずれにしても、更に知りたくなる謎の加藤会長の人物について知るべく、突撃インタビューを敢行しました。
「『新卒』で翻訳者になるなんて、すごい語学力だったんですね!」
天才でしたからね(笑)。実は大学時代(独文学科)は典型的な遊び人だったので4年で卒業叶わず、2年留年して6年生で卒業しました。ドイツ語なんてやったってしょうがないと思っていましたから、講義にはほとんど出席せず、KFCのバイトに精を出し、愛車セリカLB2000GTを乗り回し、専門単位ゼロのまま4年生を迎えました。
高校時代は英語が大好きだったので本当は大学でも英語を勉強したかったんですけど、英語しか勉強しなかったら日本の平均点優遇システムのせいで総合点が及ばず、仕方ないので独文学科に入りました。なので、元々ドイツの文化や文学などにはちっとも興味ありませんでした。けども、語学は大好きでそれで5年生から奮起して正味2年の勉強でドイツ語の特許翻訳者になりました。なのでやはり天才だったのかもしれませんね(笑)。
「特許翻訳ではなくても翻訳者になっていたと思いますか?」
不真面目な学生でしたが、元々語学は大好きで、中学生時代は昼休みに教室で外国語のモノマネショーを開いていたくらいです。留年して大学5年生から奮起しましたが、そのときから周囲に「やるならドイツ語のプロになる!」宣言をしました。だって卒業だけ目指して勉強するなんて馬鹿らしかったですからね。とはいっても、ドイツ語のアルファベットさえまともに言えない始末で、周りは笑っていました。
でも、語学は「読み・書き・話す・聞く」の4拍子揃ってはじめて楽しめると思っていたのでアルファベット言えないけどドイツ語の会話学校にも通いはじめ、さらにドイツ大使館の紹介でドイツにBrieffreundin(ペンパル女子)をゲットして文通を始めました。メールなんてないロマンのある時代でしたからね。
この悪あがきを見ていたある教授が私に興味を持ち、授業以外に文学ではないスペシャルテキスト(SternとかSpiegelの時事記事など)を使って研究室でプライベートレッスンを施してくれることになりました。この教授は母親がスイス人で、ヨーロッパの社会事情にも詳しく、ドイツ語と一緒にAsylbewerberやEhe ohne Trauscheinなどの当時の欧州の社会問題を絡めて2年間ドイツ語をバッチリ仕込んでくれました。
ついでに、Schwyzertütsch(スイスドイツ語)も自然に仕込んでいただき(その当時は標準語との違いなど全く知らなかった)、おかげで今でもドイツ語発音は「ch」が強いです(笑)。最初に降り立った欧州の街はZüri(チューリッヒ)だし、Matterhorn(マッターホルン)に魅了されて登山が趣味になったし、いまだにスイスには人一倍思い入れが深いです。
就職については、独文学科ですから、留年したら逆にドイツ語で勝負するしかないと思っていました。私のプロ宣言をサポートしてくれた例の教授から学科の先輩が勤めていたドイツ系特許事務所を勧められ、採用試験を受けました。そこの人事課長さんが超変わり者で、日本の大学の成績なんて全く信用しない、という主義のお方で、ようはドイツ語の採用試験の結果次第、ということだったので、BとCしかない留年生の私の成績でも運良く採用されました。
会話力はまだ全然ダメでしたが、無敵の自信過剰の権化だったので、卒業前にドイツのペンパル女子にも逢いに行きました。一緒に映画やディスコに行ったりして楽しかったですね、彼女とはいまだに交流があります。本来は話すほうが好きだったので、翻訳者になったと云ったら多くの友人が腰を抜かし、おまえには絶対に合わない、と言われましたね。
なので、留年から始まったこの一連の騒動で得た機智と巡り会いのご縁がなかったら絶対に特許翻訳者はおろか、何の分野の翻訳者にもなっていなかったと思います。「読み・書き」だけで満足する翻訳なんて語学の楽しみの50%しか味わえないのでもったいないですよ。語学は、ヘタクソでも発音してなんぼだと思っています。それに他人が書いたものを変換するだけなんてつまらないですよね。私は自分で書いて自分で言いたいので、もしかしたら自分はむしろ翻訳されたい側、言うなれば「被翻訳者」のタイプかもしれません。
そんな人間がよりによって翻訳会社の会長をしているのだから笑ってしまいますよね。翻訳の仕事なんていつでもやめてやると思いながら、アベコーボーの「砂の女」ではないけど気づいたら35年間どっぷり浸かって抜け出せなくなっていたんですね。これも元を辿ればすべて独文学科を留年したことによる脱線の成せる技なので、運命の流れに身を委ねています。
「趣味はどのようなものがありますか?」
ボクシングと剣道ですかね。剣道は40過ぎから始めました。現在五段までたどり着きましたが、いまだロックな会心の一撃は打てていません。
誤解されないように申し上げておきますが、「読む」ことも大好きですよ。だから本はよく読みます。サルトルだってカミュだって読みましたよ。日本代表のコーボーやミシマも読みました。ははぁん、フランスではこういうのがウケルのか、とか思いながら。意外かもしれませんがドイツ文学も一応主要なものは全部読みました。ヘッセは読みやすく、Narziss und Goldmundとか好きでしたね。
でも一番のお気に入りは多分トーマスマンのDer Zauberberg(魔の山)ですかね。舞台はスイス(Davos)だし、Settembrini氏の屁理屈のファンです。電車内で読むのはスパイ小説ですね。トムクランシーやフリーマントル、ダン・ブラウンなんかも好きです。
SFモノも大好きで、一番はダン・シモンズのハイペリオンシリーズですかね。魔の山の数倍も長い壮大なロックな宇宙物語で、SFの最高傑作だと思います。全編を翻訳した酒井昭伸さんという翻訳家を尊敬します。日本だったら椎名誠の「アド・バード」とか村上春樹の「羊をめぐる冒険」シリーズが好きかな。どちらも「脳髄男」とか「羊男」とか奇妙な命名が出てきて言語的にも面白い。
高校大学時代のバイブルは矢沢永吉の「成り上がり」に尽きます。これ読みながら留年しているのだから世話ないですけど、プロ目指して勉強を始めたときの原動力になったのは確かです。「よーし、見てろよ!」ってね。こうして見るとどれもやたら理屈っぽい内容の本ばかり読んでいるみたいなので、やはり自分は特許翻訳に向いているのかもしれませんねえ。
「他にも聞きたいことがあったのですが誌面が足りなくなりました。最後にお客様に一言、メッセージがあればいただけますでしょうか?」
過去の物語で誌面の大半を割いてしまいましたが、何かの記事で読んだのですが、過去の話しかしない男は一番モテないそうなので、少し未来のことにも触れておきたいと思います(笑)。
こんな会長がいる会社ですので、社長も役員も社員もアルバイトも総じて変です。翻訳者にいたってはかなり変です(自覚はないようですが)。ただし、翻訳の腕(だけ)はピカイチです。特許事務所時代からの同志も多いですし、私は彼らを全面的に信頼しています。
昨年からは通訳事業も開始し、ついに「話す・聞く」の要素も取り入れました。これで語学の楽しみの残りの50%を注入することができたので、理想的な事業を展開できると思っています。
Gleich und gleich gesellt sich gern ! 類は友を呼ぶのか(笑)、アカデミーのドイツ語講座にも情熱的で面白い生徒さんたちが集まっているので、将来はそういう、とにかく語学大好きな変な人たちを集結させて、一緒にロックな事業を展開できるような会社になれば嬉しいですね。
翻訳・通訳は、言葉をめぐる冒険の旅です。その瞬間瞬間が冒険チャレンジなんですね。こんな変な会社ですが、我々がコーディネートする「言葉をめぐる冒険」にお付き合いいただけたら光栄です。弊社の「言葉男」や「言葉女」があなたのお供をいたします。
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